『やっぱり相川先生かっこいいな……。』
『それ、毎回言ってる。』



私は中学二年の時、勉強が少しやばいため塾に入った。



個別を選択し、一対二で教えてもらうことに。



そしてこれは、国語の授業で私と同じだった男子と話している時の会話だ。



本当に相川先生が好きで、初めてだった。
自分から好きになったのは。



だからこそ余計に新鮮で、相川先生の前では平然としてるけど本当はすごくドキドキして。



上手く話せない時もあった。



『だって本当にかっこいいんだもん。』
『それ本人に言えば?』



『む、無理…!緊張しすぎて死んじゃう、から……』



かっこいいって、冗談っぽくでさえも言えなかった。



そんな私の返答に、男子は呆れたような顔をしていた。



私の前でよくする呆れ顔の男子。



でもその頃の私は相川先生に夢中すぎて、どうしてもその男子の顔と名前が思い出せない。



塾の最後の日までお世話になってたのは覚えてる。



でも顔まで忘れる私は、それほど相川先生しか見てなかったのだ。