一方、アンディード帝国では消えた妃に関する居場所の特定や連れ去った犯人について早急に調査が進められていた。


「陛下。これが現在の調査書になります」

そう言って不穏なオーラを執務室から漂わせていた陛下に手渡されたのは、各町で調査している騎士や兵士達による調査書であり報告書。

「………………まだこれだけしか情報が集まらぬというのか。無能な奴らめ」

「これでも皆陛下の命令で徹夜し捜索を続けているのですが、まだ何とも言えない状況でございます」

その調査書を手渡した張本人の宰相は『はぁ……』と深いため息をついた。

妃がいなくなったと報告を受けて早数日経つが、一向にこれと言った情報は掴めていなかった。

捕まえた闇商人を拷問にかけたが、知らないの一点張りで結局苦痛に耐えかねて死んでしまった始末。

「すまないが君たちは少し席を外してくれないか?ついでにここには誰も近づけないでくれ。陛下と大事な話をするのでね」

宰相は近くに控えていた兵士にそう言葉をかけると、その場は宰相と陛下だけになった。

「……リード。そろそろ休んだらどうだ。最近寝ていないだろう?」

「1時間は寝た。問題ない」

「いや、1時間は少ねぇーって!しっかり休まねぇと体力が持たないぞ」

ファンはあの報告を受けて以来、陛下がしっかりした休息をとれていない事に気づいていた。

「我が妃が……アニーナがどこへ行ったかも分からないのに、休んでなどいられぬ。すぐ様捜し出し連れ去った奴らを打ち首に…………」

更に不穏なオーラが溢れだす。

「リードのそのオーラか威圧かは知らんが、どうにかならないのか?皆それに怯え近づけないと話していたぞ」

「そんなの知ったことか」

「……………しかし、リードの心配になる気持ちは分かる。民や使用人の中では療養に出かけたお妃様が賊か何かに襲われ連れ去られた事になっている。本当の事を知っているのはこの極わずか。その中でどれだけ有力情報を掴めるか…………」

本当の事を知っているのは陛下と宰相、そしてアニーナの護衛を任されたクレハと、その報告を受けた第一騎士団団長シュライク・ギャビン。

それと後はあの時会議室にいたメンバーとなる。

この事を知っている者には守秘義務が課せられ、公には公表されていない。