走っても走っても、後ろから武藤くんの声が聞こえてくる。



幻聴…だよね?



武藤くんが泣いてるあたしを追いかけてくるなんて、あるわけない。



けれど、あたしの前に回り込んで息を切らして立っているのは…紛れもなく武藤くんだ。



「なっ…泣いてないよ。これは汗が目に入っただけ。どうしたの?あたしになにか用かな…」



慰めに来てくれたのかな…もしそうだとしたら、すっごく優しい。



フられたようなものなのに、やっぱりドキドキするのは好きになってしまった証拠だよね。



「用がなきゃ追いかけねーだろ」



やっぱり…優しい。



「武藤くん…あたし…」



「財布、届けてくれたんだろ」



へっ?



手に握っていることすら忘れてた。



そうだよ…どうして武藤くんを追いかけたのか、今思い出した!