優海の家族は、彼が小学四年生のとき、事故で亡くなった。

両親と優海と弟の広海くん、家族四人で横断歩道を歩いていたとき、信号を無視して交差点に突っ込んできたトラックに轢かれたのだ。

優海をかばって突き飛ばしたお父さんと、広海くんを守るために抱きしめたお母さんは、ガードレールとトラックの間にはさまれて即死だった。

広海くんはお母さんの腕の中で瀕死の重傷を負い、意識が戻らないまま三日後に息を引き取った。

事故の知らせを受けたときの衝撃、葬式で彼らの死を実感したときの悲しみ、ニュースで事故を起こした男の顔を見たときの怒りは、今でも鮮明に覚えている。

あんなに優しい人たちが、なんの罪もないのになぜ命を奪われなければならなかったのか、どれだけ考えても分からなくて、どうしても運転手を許せなかった。

殺してやりたいと思うほどに憎んだ。


優海はお父さんに突き飛ばされたおかげで命は助かったけれど、倒れた拍子に頭を打ち、全身に怪我をしていて、しばらく入院になった。

おばあちゃんと一緒に見舞いに行ったときに見た、包帯でぐるぐる巻きにされた彼の姿が目に焼きついている。


大好きな家族を一度に失ってしまった優海は、退院後もショックでふさぎこんでいて、しばらく学校を休み、外にさえ出られない日々が続いた。

優海が心配で心配で、私は毎日彼の家に通った。

何かしてあげられるわけではなく、ただ隣にいて寄り添うことしかできなかったし、自己満足なのは分かっていたけれど、それでも私が一緒にいないといけないと思っていた。