《蓮央side》




酎ハイの缶を抱えて階段を下りていく咲誇を目で追いながら、ため息を吐く。



...どうしたんだ、俺。




「蓮央、お前も飲めば?」




圭太が鉄の手すりに缶ビールを置く。


でも飲む気にはなれなかった。


諒真が落としたやつを拾ってるの、見たし。


それに何となく酒に溺れる気分じゃないからっていう理由もあって。


手すりに頬杖をつきながら階下を見下ろしていた。


当然、そんな俺に、圭太は疑問を持ったようで。




「何でそんなに浮かない顔してんだ?」


「...べつに」


「なんか悩み事でもあんの?お前にしては珍しいな?」


「悩みっつーか...」




どうしても、気になる。

本田咲誇という女の事が、俺の頭から離れない。


こんなの〝あの事件〟以来無かったのに。




「なんか、今までと違うんだよ」


「...咲誇のことか?」


「あぁ」


「そうか...。
蓮央が珍しく悩んでると思ったら、まさかの女絡みだったなんてな」