何だか、久しぶりの1人だったから、幻でも見てたんじゃないかなんて思った。
いやいや、そんな事は無いはず。
しばらくすると、くるみさんは帰ってきた。
「ただいま帰りました!」
くるみさんは、そう楽しそうな表情で敬礼のポーズをしてみせた。
「おかえりなさい、何かいい事あったの?」
私がそう問うと嬉々として答えた。
「藤原さんって人に出会えました!」
「あら、奇遇ね、私もよ。」
「あれ、そうなんですか?でも何かあんまり優しそうな人じゃなかったです。」
「え、ほんと?」
「はい、話しかけて来たんですけどね、特にニコニコもしてなくて、思ってた感じじゃなかったです」
「どんな話をしたの?」
「えっと、この世界にはルールがあって、来る人には理由があるって言ってました」
「え…。」
私は絶句した。
元々、理不尽な世界に居たが、訳の分からないこんな世界に呼ばれる様なことはしていないつもりである。
しかも、藤原さんはそんな事を私には一切言っていない。
どうしてくるみさんには話したのだろう。
私は言葉を失って沈黙した事に気づきさらに問うた。
「他には何か言ってた?」
するとくるみさんは首を傾げながら答えにくそうにした。
「何か言われたの?」
そう聞くと、楽しそうなくるみさんも気まずそうにした。
しかし、だからとてここで聞かないわけにはいかない。
私はくるみさんを、苦しめたくて聞いているのではない。この世界が知りたいだけなのだ。
そのことが伝わったのか、少しずつ話し始めた。
「あのですね、言ってなかったんですけど、私、自殺したんです。」
もしかしたらとは思っていたが、改めて言われると驚く。
それもある意味、想定内と言わんばかりの沈黙ののち、なおも語りづける。
「その、大学に入るまでは良かったんです。勉強もそれなりに出来てて、でも大学に入った途端全然追いつけなくなって。」
うんうん、と頷く私。
下を向く彼女。
「就活も視野に入れつつ踏ん張らないといけない時期だったんですけど、何かもう全部嫌になってきちゃって。本当に弱いんです、私。」
くるみさんは涙を零し始めた。
私も言わば、自殺なのかもしれない。
私は私が死んだと知ったのはテレビのニュースで、その事実を私に突きつけたのは藤原さんだ。
死んだのかどうかとか、そんな事を気にする間もなくこの世界に馴染もうとしていた自分もいる。
くるみさんは下を向き泣いている。
今度は私の番だ。
「あのね、くるみさん。私ももしかしたら、自殺したのかもしれないの。」
零れる涙を堪えながら、くるみさんはこちらを見て首を傾げた。
「私は私が死んだと知ったのは、テレビのニュースなの。大阪府在住の住岡亜希さんが誰かに押されて電車に轢かれたって。でもその人はすぐに姿を消したって。」
「でも…それじゃ…殺されたんじゃ…?」
くるみさんはそう私に聞く。
「うん、そうかもしれないけど、私も死んでしまいたいって思ってたの。実際そうなるとは思ってなかったけど。」
きっと誰にでもあるような想い。
きっとくるみさんにだってあったのだろう。
今となっては誰に背中を押されたのかとか、どうだっていい。
私はグッと涙を堪え口角を上げてみた。
ファンタジーの世界は必ずしも華やかな訳じゃない。
現実から目を背けたところがまた、現実となる事だってある。
「くるみさん、私たちがこの世界に来た理由はきっと私たちにしかわからないと思うの。だから、元の世界に戻れても戻れなくても、今私たちには生きてると思うの」
死ぬってなんだろう生きてるってなんだろう。
そんな事はきっと10代の思春期に幾度と無く考えただろう。
ただその答えよりも、テストの答えの方が重要な世界ではその問いを押し殺して20代になっていく。
しかし今、その問いを追いかけられる世界にいる。
生きていく意味を死との会話も、今ならきっと出来る。
私たちはそう決めた。
お互いを安心させるように少し抱き合い、ハニかんでみせた。
きっと覚悟のいる選択なのだろう。
しかし覚悟の伴わない選択に何の意味を付けれよう。
覚悟はいつだって裏切らない。
そんな事を思って眠った。
いやいや、そんな事は無いはず。
しばらくすると、くるみさんは帰ってきた。
「ただいま帰りました!」
くるみさんは、そう楽しそうな表情で敬礼のポーズをしてみせた。
「おかえりなさい、何かいい事あったの?」
私がそう問うと嬉々として答えた。
「藤原さんって人に出会えました!」
「あら、奇遇ね、私もよ。」
「あれ、そうなんですか?でも何かあんまり優しそうな人じゃなかったです。」
「え、ほんと?」
「はい、話しかけて来たんですけどね、特にニコニコもしてなくて、思ってた感じじゃなかったです」
「どんな話をしたの?」
「えっと、この世界にはルールがあって、来る人には理由があるって言ってました」
「え…。」
私は絶句した。
元々、理不尽な世界に居たが、訳の分からないこんな世界に呼ばれる様なことはしていないつもりである。
しかも、藤原さんはそんな事を私には一切言っていない。
どうしてくるみさんには話したのだろう。
私は言葉を失って沈黙した事に気づきさらに問うた。
「他には何か言ってた?」
するとくるみさんは首を傾げながら答えにくそうにした。
「何か言われたの?」
そう聞くと、楽しそうなくるみさんも気まずそうにした。
しかし、だからとてここで聞かないわけにはいかない。
私はくるみさんを、苦しめたくて聞いているのではない。この世界が知りたいだけなのだ。
そのことが伝わったのか、少しずつ話し始めた。
「あのですね、言ってなかったんですけど、私、自殺したんです。」
もしかしたらとは思っていたが、改めて言われると驚く。
それもある意味、想定内と言わんばかりの沈黙ののち、なおも語りづける。
「その、大学に入るまでは良かったんです。勉強もそれなりに出来てて、でも大学に入った途端全然追いつけなくなって。」
うんうん、と頷く私。
下を向く彼女。
「就活も視野に入れつつ踏ん張らないといけない時期だったんですけど、何かもう全部嫌になってきちゃって。本当に弱いんです、私。」
くるみさんは涙を零し始めた。
私も言わば、自殺なのかもしれない。
私は私が死んだと知ったのはテレビのニュースで、その事実を私に突きつけたのは藤原さんだ。
死んだのかどうかとか、そんな事を気にする間もなくこの世界に馴染もうとしていた自分もいる。
くるみさんは下を向き泣いている。
今度は私の番だ。
「あのね、くるみさん。私ももしかしたら、自殺したのかもしれないの。」
零れる涙を堪えながら、くるみさんはこちらを見て首を傾げた。
「私は私が死んだと知ったのは、テレビのニュースなの。大阪府在住の住岡亜希さんが誰かに押されて電車に轢かれたって。でもその人はすぐに姿を消したって。」
「でも…それじゃ…殺されたんじゃ…?」
くるみさんはそう私に聞く。
「うん、そうかもしれないけど、私も死んでしまいたいって思ってたの。実際そうなるとは思ってなかったけど。」
きっと誰にでもあるような想い。
きっとくるみさんにだってあったのだろう。
今となっては誰に背中を押されたのかとか、どうだっていい。
私はグッと涙を堪え口角を上げてみた。
ファンタジーの世界は必ずしも華やかな訳じゃない。
現実から目を背けたところがまた、現実となる事だってある。
「くるみさん、私たちがこの世界に来た理由はきっと私たちにしかわからないと思うの。だから、元の世界に戻れても戻れなくても、今私たちには生きてると思うの」
死ぬってなんだろう生きてるってなんだろう。
そんな事はきっと10代の思春期に幾度と無く考えただろう。
ただその答えよりも、テストの答えの方が重要な世界ではその問いを押し殺して20代になっていく。
しかし今、その問いを追いかけられる世界にいる。
生きていく意味を死との会話も、今ならきっと出来る。
私たちはそう決めた。
お互いを安心させるように少し抱き合い、ハニかんでみせた。
きっと覚悟のいる選択なのだろう。
しかし覚悟の伴わない選択に何の意味を付けれよう。
覚悟はいつだって裏切らない。
そんな事を思って眠った。