春の桜が散った頃。



ーワイワイ



「…」



何故か夜会に引っ張り出された私時無霞は、会場のテラスに居た。



どこが主催…といえば家だ。



時無財閥。

世界No.1の財力を誇ると言われる時無の表の顔。



普段なら私は来ずに済んだはずだが…。

現在兄2人に強制連行された後の身としては何とも。



長兄の美夜兄に右肩。次兄の結兄に左肩を持たれて…。



だが理由は特に聞かされていない。

まぁ聞いてもいないが。



今は言われた通り、気配を消してテキトーに過ごしてる。



ふと、会場内に見える2人。



艷やかなハーフアップの黒髪、切れ長な印象の深い青の瞳のイケメン。

仕事モードで夜会用に整えた身だしなみをしたスーツ姿の美夜兄。



灰に近い柔らかそうな銀髪、穏やかな薄紫の瞳の中性的な美形。

ニコニコ微笑を浮かべている和服姿の結兄。



2人はやはりというか人に囲まれていた。



……暇だ。



テラスの柵に肘を置いて凭れていた体勢から起き上がり、

室内からは死角になる位置に置いてあるソファに腰掛ける。



フカフカな柔らかいクッションを使われたソファ。



地味に疲れていた足の力を抜き、軽く伸びをした。



「っ〜」



その時。

ーバンッ





突然扉が開けられた。



さっきから風の音程度の音しかしない静かなテラス。

結構驚いた。