《side 広真》


『結婚するの、宮脇先生と』


名前も知らない学年も知らない女の子を抱きしめたまま、目を瞑って。


俺は、さっきまで会っていた女の人の顔や声や匂いを思い出す。


やっぱり好きだなぁ。

振られたのに余計溢れる。


最低なのは、自分がよくわかっている。


ただ、誰かに触れることで気が紛れると思ったのかもしれないし…


ううん、違う。


目の前にいるこの子を、俺は彼女と置き換えて、彼女を抱きしめているかのように触れたかったんだ。


最低。


自分で何度もそう思うよ。


自覚してるとこは褒めて欲しいな、なんて。


抱きしめる手を離そうとしない俺に、何も言わないでくれる女の子。


ごめんね。


俺は君を好きにはなれないよ。


でもちゃんと言ったから。


それでもいいと言ったのは君だから。