(ん…ここは…?)

気がついたときにはあたしはクッションを敷き詰めたかごの中に寝かされていた。

見ると傷もしっかり手当されていた。

(いったい誰が…)

いまだに朦朧とする意識をはっきりさせようとしていたら、部屋のドアが開いた。

「目が覚めたか、子狐」

部屋に入ってきたのは人ではなかった。

見た目はとても恐ろしかった。

物語に出てくる化け物のような姿をしていたが、不思議と怖くはなかった。

それに、声は聞いてて心地よいテノールで安心感さえあった。

彼はこっちに来ると、お盆に乗ったスープを差し出した。

「食え。食わぬと傷も治らぬ」

野菜は柔らかく煮込んで食べやすくしてあった。

初めて食べた温かいスープはとてもおいしかった。

彼はあたしが食べている間そっと見守っていてくれた。