「お兄ちゃーん!」


「……え、なんで」


眩しい光と、俺の名前を呼ぶ大きな声。重いまぶたを開けると、そこには驚くような人物がいた。



それは……俺の妹、広瀬杏(ひろせあん)。


今年度から小学1年生になった、まだ俺の半分も生きていないような子供なんだ。それでもこの状況を理解して受け入れている。


そんな杏はすごいと思うし、何よりかわいそうだと思う。



「ママはね、お仕事行っちゃった……」


俯きながら寂しそうな顔でそう教えてくれる。


いつもそう。俺の母さんは朝早くから仕事へ行き、夜遅くに帰ってくる。


だから杏はいつだって寂しい気持ちを抑えながら母さんの帰りを待っているんだ。



でも、今日は休日じゃないのにどうして杏が?


いつもならもう小学校に行っている時間なのに……って、俺も高校遅れる!