「ねぇっ、次はメリーゴーランドに乗ろうよ!」

「えーっ、また?
三回も乗ったじゃない……」

「だって、次は赤い馬車に乗りたいの!」

「ハイハイ……亜衣、俺が行くから」



仕方ないな、といった表情で亜衣の手をとって、奏くんがメリーゴーランドに向かって歩き出す。



「やった!
さすが、奏」

亜衣もご機嫌だ。

「……さすが、奏。
彼氏の鑑だな」

苦笑混じりに話す慧に、私は明るく返事をする。

「奏くんは優しいから。
最高の彼氏だって、よく亜衣が言ってるもん」

「へぇ?
俺も結奈には誰より優しいよ?」

「……!」



サラッと返答に困る言葉を、恥ずかしげもなく極上の笑顔で披露してくれる慧。

サラサラと男子にしては珍しい、細めの柔らかそうな髪。

無造作に流した長めの前髪。

小さな顔に百八十センチ近い身長。

私を見る、アーモンド型の綺麗な二重の瞳。

溜め息を吐きたくなるくらいに長い睫毛。

スッとした鼻筋。

まだ同じ十代なのに、隙のない端正な顔立ちに、思わず見惚れてしまいそうになる。



「……そ、そうだね。
ホラ、私達も行こ?」

慧から視線を剥がして、亜衣の後ろ姿を目で追う。

慧にいつもドキドキさせられて、可愛い返事を出来ずにいる私は、言葉を返すことが精一杯。



「……相変わらず素っ気ないな、結奈は」

クスリ、と口角をあげて笑うその仕草さえ、様になる。

そして、その仕草のひとつひとつに目が離せなくなる私は本当に情けない。

こんな調子でこれから、きちんと大切な話ができるのか不安になる。