着替えとヘアセットが終わった市木と真吹が階段を降りてくる。

市木は恐る恐る手すりを掴みながら、一歩一歩足を踏み出してる。


「……可愛い」


零れるように言葉が出た。

さっきまでいた児童養護施設で殺人鬼と呼ばれていた少女が、今この場で天使のように俺の前にいる。

淡いピンクのワンピースの裾を落ち着かないと言うように摘み、ハーフアップに結われた髪の毛先をいじっている。


「あ、あの……これは……」

「似合ってるぞ。唐沢家の使用人に相応しい」


手を差し伸べ、最後の一段を降りるのを助けた。


「時流様、今更カッコつけてもさっきの発言は取り消せませんよ」

「語彙力が消失しちゃうほど可愛かったんですねー!事実だけど!」


蝶野と真吹が茶化す。


「う、うるせぇ!それより真吹、夕飯の刻だろ!」

「はいはいただ今お持ちしますよ〜」


にょーほほほほほ〜と変な笑い声をあげながら、真吹は厨房に入っていった。