【うまくいかない】




「湯たんぽ出す?」

「どこにしまったっけ?」

「んー、多分押し入れかクロゼットか」

「あー、この間夏物と読み終わった本しまっちゃったしなあ」

「扇風機とか頂きものの食器とか、全部手前に置いちゃったしね」

「次の休みでいいよ。大掃除も徐々にしていかなきゃないし」

「そうだね。同じベッドで寝てるから、セルフ湯たんぽだしね」

「うん、おまえ体温高いし」

 そんな会話をしたのが、数時間前のこと。

 季節はもう冬だけれど、次の休みまでの数日間くらい、寄り添って寝れば大丈夫だろうと思った。
 ただ単に、押し入れやクロゼットを漁るのが面倒だったとも言える。



 ただし、そう上手くはいかない。

 同じベッドで寝ているとはいえ、夜がふけると気温はどんどん下がる。寝返りを打てば、身体が離れる。そうすれば空間ができる。その空間に冷気が流れ込み、身体を冷やす。身体が冷えた結果、……


「寒い!」「風邪ひくわ!」

 寒さで同時に飛び起きた。



 そんな失敗を活かし、次の晩は面倒くさがらずに、押し入れとクロゼットを漁ることにした。

 念には念を入れ、湯たんぽと電気毛布をダブルで投入。

 これで彼と寄り添えば完璧。もう寒さで飛び起きることはないだろう。


 ただし、そう上手くはいかない。

「暑い!」「干からびるわ!」

 季節はもう冬だというのに、彼もわたしも汗だく。息が切れ、のどはからから。あまりの暑さに飛び起きた。


 仕方なく電気毛布の電源を切り、湯たんぽを蹴り、水分補給をしたあと、彼と距離を置いてベッドに入った。


 寒さで再び目を覚ますまで、一時間。







(了)