生まれて初めての平手打ちは、幼稚園のとき。

ぱちん、と可愛げな音だった。

初めて打った相手の頬は思っていたよりも温かく、そして打った自分の手も痛くなることに気付いた。

彼はぽかんとしていた。けれど、目の縁に涙を溜めていたのを覚えている。

理由なく打ったわけじゃない。わたしはそんなに暴力女ではない、という自負はある。

裏山で遊んでいて、わたしが転んだかで膝を擦りむいた。じわじわと滲む血を見て、泣きそうだったのはわたしの方だ。

その膝を、あろうことか、目の前の彼が舐めたのだ。