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想定外の事態が……起きました。



「おねーちゃん? おねーちゃん!

もうっ、またボーッとしてるでしょ!?」



「ああ……ごめん、かのちゃん」



「むう……

おねーちゃんすぐ別のこと考えて……わたしはおねーちゃんと出掛けるのすごく楽しみにしてたのに……」



「ご、めん。わたしも楽しみにしてたわよ」



むっと拗ねるかのの機嫌を取るように頭を撫でたけど、嫌がる様子はなくわたしの腕に腕を絡ませてくる。

いつも以上に甘えただなと思いながら脳裏を掠めるのは、あの日のこと。──綺世に、駅で、キスされたこと。



離れてから我に返って「ひとりで帰るから!」と彼を突っぱねてしまい。

夕李の家まで迎えにいくはずだったのに顔を合わせづらくなって、駅に着いたからかのに帰ってきてもらうように伝言してもらった。……情けない。




あの日から一週間。

正直な話、夕李とも会ってなければ百夜月の幹部の誰とも会ってない。っていうか会いたくない。



「おねーちゃん、あとで浴衣も見よう?

なんなら先に浴衣でも見に行く?」



「……かのちゃん。花火大会一緒に行こうか」



わたしが夕李と付き合ったのは、綺世を忘れるためなのに。

綺世に好きと言われて、わたしは綺世が好きで。両想いだなんてそんなの、想定外にも程がある。



ずっとそばにいてくれた夕李に、まさか綺世と両想いです別れてくださいなんて言えるわけもなく。

もちろん綺世に、わたしも好きだと言えるわけもなく。



「えっ、一緒に行ってくれるの!?」



「たまには、ね。

夕李とばっかり過ごしてるって、かのも不満だったんでしょ?」