「――この三人で演奏するのは、初めてよね」
「腕がなるなぁ」
「オレは演奏するの自体久しぶりだよ。鈍って(なまって)なきゃいいけどな」
「よく言うわ。日頃からエレキヴァイオリンにヘッドホン付けて、音を外に洩らさないようにして練習してるのを、アタシが知らないとでも思った?」
「あれ、バレてた?」
「当たり前よ」
「禾楓ちゃんは、一日ごとの水道光熱費をチェックしてるんだもんねぇー」
「とーぜんっ。ダテに家計を預かる身じゃないわ」
「消費電力量のメーター見ただけでそこまでわかるんだ……もしかして電気会社でバイトしてた?」
「ばか。そんなわけないでしょ。カマ掛けただけよ。琴沙も悪ノリしないのっ」
「あはッ」
勝手知ったる何とやら。
アタシたちは、主の居ないログハウスのテラスの灯りを点し、外付けのコンセントから電源をひいて。
こんな雑談で白い息を交しながらセッティングを終えた。
そして、始まる。