満足な鍛錬ができないまま、闘神祭当日を迎えた。

秘薬を接種して以来、日に日に体の火照りが強くなっている。

身体の内から力が湧いてくる感覚と、得体の知れない力への戸惑いと恐怖が頭をもたげ、不安で仕方ない。

朝からハーン殿の念入りな診察を受け「試合後、必ず救護室においでください」と告げられた。

開会の辞の後、楽団の演奏が勇壮に奏でられ士気が自然と高まった。

奉納試合の宣言で、観覧席に座した両陛下と姉上に見送られ、闘技場に入り試合相手の祥と対峙した。

名前と年代は聞いていたが、彼ががっしりとした筋肉質で自分より一回りも体の大きな人物だと知り、一瞬不安になった。

陽に焼けた浅黒い肌と引き締まった体は彼が普段、真面目に鍛錬に励んでいることを否が応でも確信させる。

得物が指南役紅蓮と同じ長刀だと知り、ホッと胸をなで下ろした。