あたし、土屋芙祐(つちやふゆ)。
冬生まれだから芙祐。
高校3年生で、今は受験生の11月。



受験日までは、校則違反の茶髪でいると思う。

そんな長い髪をくるくる巻き直してから、ピンクのグロスを塗りなおす。


更衣室の大きな鏡を陣取って、


「でーきた」


お化粧カンリョウ。かんぺき。
この後の放課後は、彼氏に会いに行くからね。



「芙祐ってさ……」


「藍ちゃんどうしたの?」



隣に立っている親友の藍(アイ)。


鏡越しにあたしを見つめてる。


黒髪ボブを内まきに直しながら、


「なんか、弥生(やよい)と付き合ってからまた可愛くなったよね?」


そんなこと言ってくれるイイコ、藍。


「藍ちゃん……。いい子だから飴ちゃんあげるね」



お姉さん感動したよ。


「ありがとー。だってまたラブレターもらったんでしょ?」


「もらってないよ」


ちゃんと、”彼氏がいるからもらえません”って、言ってるよ。


あたしちゃんとしてるからね。そういうのは。


「ちょっと前までの芙祐じゃ考えられないよ」


「なにそれ」


「そりゃそうでしょ。アリかナシかで”アリ”ならだれとでも付き合ってたんだから」


「失礼な。ちゃんと吟味して付き合ってたもん」


「数えきれないほど彼氏がころころ変わってたけど、ちゃんと好きだったの慶太くんと弥生だけじゃん」



慶太くん、元カレ。


弥生、今カレ。



「む……」


「そうでしょ?」


ぐうの音も出ないからね。


あたし逃げたよ。藍から。


「すぐ逃げようとする!だいたい芙祐は・」


藍ちゃんの愛のムチ。必殺技お説教。
更衣室の扉閉めたら、藍ちゃんの声聞こえなくなったよ。



今日は寒い。ここ廊下なのに息が白いんだけど。




あたしは今日の放課後も、理数科のがり勉くんの元へ急ぐ。