「ちょっといいかしら」
小さな声だった。
他の二人に聞こえないように、おばさんの方から声をかけられた。
「はい」
「コーヒーでも飲もうかしら」
優しく微笑んで誘われた。
私たちは、病院の中にあるラウンジに移動した。
母よりは、少し若いくらいのとても上品な女性だった。
どんな話になるのか気になる。
この人が、彩香さんのお母さんだ。
彼女の面影が、どことなく感じられる。
彩香さんの立場に立てば、いい話のわけないだろうなと思う。
コーヒーを二つ自販機で買い、私たちは向き合って座った。
「えっと」紙コップを持ったまま尋ねようと思った。
けれど、おばさんの方から言葉をかけて来た。
「伸二。彼が私たちのことを「おじとおば」と呼んでくれてたとおり、私たちは彼の親代わりなの」
「はい。存じております」
「あら、あの子そんなところまで話したの?」
「はい」