お父さんと話さなくなったのはいつからだろう。
中学生になって、生活の中心が全部友達になってからだったかな。
遊びに行くのも、深い話をするのも、笑い合うのも全部友達。
お父さんとは朝と夜に少し顔を合わせるくらい。
親に出来ない話がどんどん増えて、友達といる時間の方が楽しくなった。
それは高校生になってからも同じで、一緒にご飯を食べていても、お父さんとの会話はほとんどなくなった。
嫌いになったわけじゃない。
それなのに、話しかけられただけでうっとおしく思ったり、そっけない返事しか出来ない。
うっとおしい。
深く突っ込まれたくない。
ほっといてほしい。
あたしも、人並みに反抗期と呼ばれるものに突入したんだと思う。
そんなある日ーー。
「るり……話があるの」
学校から帰ると、お母さんが泣き腫らした目であたしの部屋にやって来た。
「なに?あたし、用事があるんだけど」
「もうすぐお父さんも帰って来るから、その時に話すね」
めんどくさい。
そんなことより、友達と遊ぶ方が大事なんだけど。
それに、テスト勉強もしなきゃ。
万里(ばんり)にも会いたい……。
あたしには、やらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。
この時はお母さんの泣き腫らした目を見ても、そんな風にしか思えなかった。
しばらくするとお父さんが帰って来て、あたしと妹のゆりはリビングに呼ばれた。
どこか深刻そうな顔をした両親に、ゆりとあたしは顔を見合わせる。
いったい……なんなの?
「突然なんだけど、お父さん癌なの」
「「え……?」」
癌……?