嫌な予感がした。

享也は慌ててリビングへの扉を開ける。

彼の予感はよく当たるのだ。

とりわけ、嫌な予感ほど。

「……琉衣? 琉衣っ!」

何度も名前を呼ぶが、そこに琉衣の姿は無かった。

静まり返ったリビングのソファには、取り残されたように琉衣の鞄が落ちている。

遅かったか。

リビングに漂う違和感。

恐らく学校から着いてきたヤツの仕業だろう。

瞬時に状況を理解した享也は、まだ繋がったままになっていた電話を持ち直した。

「琉衣が居なくなった……今からそっち行くから出る準備しとけ」

電話の向こうから抗議とも不満とも取れる声が聞こえてくるが、享也はそのまま電話を切る。

自分の不甲斐なさに歯噛みしながら、享也は車のキーを持って外に出た。