ある日の昼頃。
ドンドン、と玄関の扉を叩く音がした。
「誰?」
扉の向こうの誰かに、私はたずねる。
「隣の……美佳(ミカ)だよ!」
「美佳ちゃん?」
美佳ちゃん。
同じ小学校に通っていた、同級生だ。
私と美佳ちゃんは、仲がよくもなければ、悪くもないといった絶妙に微妙な関係だ。
私は、少しだけ扉を開けた。
「あ、あのさ。
食べ物、ある?」
美佳ちゃんが聞く。
「食べ物?」
「うん。
ちょっと、食べ物切らしちゃって困ってるんだよね。
家庭菜園的なやつやってたんだけど、全部枯らしちゃってさ……。
頼むよ。ね?」