「奏ーっ!目覚まし時計鳴ってるよ!起きなさーいっ」



けたたましいアラームの音と、階段下から響くお母さんの声に飛び起きた。

耳元で騒ぐ目覚まし時計を叩き、上半身をハッと起こした。



……いつの間にか朝になっていた。

どうやって帰って来たのか、よく思い出せないけれど。



カーテンの隙間から漏れる光が、今は朝だってことを証明していた。



「早く下りて来なさい!朝ごはん、出来上がってるよ!」

「分かった、今から下りるーっ!」



そっか。

昨夜は、悪魔が空に浮いていただなんて騒ぎ立てるクラスメートに何の説明もせず…

逃げるように帰って来てしまったんだっけ。



「奏ーっ?何やってるのーっ?!」

「あ、はーいっ!下りるよ、下りまーすっ!」



アーラが居なくなってしまった。

それ以外は、何も変わらない平凡な一日が始まった。



「ねぇ、奏。今朝さ、バッグから手紙が出て来たんだけど?」



重たい瞼を擦りながらリビングに降りた。

するとお母さんが、ビジネスバッグに忍ばせたはずの手紙を片手に話しかけてきた。