「奏ーっ!起きなさい、目覚まし時計鳴ってるわよ」



アラームよりも一際大きい、母の声で目を覚ました。



せっかく……爽やかイケメンとビーチバレーでキャピキャピ言ってる夢を見ていたのに。

なんで夢なんだよ、ってガッカリするほどの幸福感に満たされていたっていうのにぃぃぃ!



「うぅん……今起きるからぁ」



二度寝したいのは山々。

もう一度夢の世界にトリップして、爽やかイケメンとはしゃぎたい。



「こら!布団に潜らない!」



なーんて思ったけど、鬼と化した母の前でそれは無理か。

仕方ない……爽やかイケメンは諦めるとするかぁぁ。



「朝ごはん、出来てるわよ。早く降りて来なさい!」

「もう、分かったからっ。起きるよ起きる!」



布団を勢い良くはぎ取られ、渋々ながらに体を起こした。

ぼんやりとする視界の中で、壁掛け時計を見上げると、時刻は八時十分。



「………やっばい!遅刻する!」



重たかった瞼も一気に上がり、慌てベッドから飛び降りた。