ケータイ小説 野いちご

好きなんだけど!

01_彼と私の事情

「こら、そこで着替えるな」

「あれっ、もう行ったと思ってた」

「ゴミ捨ててきただけだよ、見えないとこ行け、ほら」



スカートのホックを留めようとしていた私をしっしっとバスルームに追いやると、健吾(けんご)くんはぴしゃりとドアを閉めた。

しまった、気を抜いちゃった。


スカートの中に手を入れて、Tシャツの収まり具合を直し、鏡で顔をチェックする。

学校で禁止されていなくても、メイクはしない。

健吾くんが嫌うからでもあり、別にいらないと私自身が感じているからでもある。


ドアが軽くノックされ、健吾くんの声がした。



「行ってくる、鍵よろしくな」

「待って、私も出る」

「あ、そうなの?」



そっと引き戸を開けると、行かずに待っていてくれている。


濃いネイビーのスーツに明るいブルーのネクタイ。

白い清潔なワイシャツ。

私を軽く見下ろす背の高さで、すなわち175㎝くらい。

"男女の理想の身長差は15㎝"が本当なら、私たちはまさしくそれだ。


顔は、本人もちょっと気にしていて、形容するなら"かわいい"と"かっこいい"の間。

の、限りなく"かわいい"寄り。

彼いわく、もっと男らしくなりたかったというか、なれると思っていたらしい。



『よく考えたら根拠なかった』



そう言って見せてくれたご両親の写真は、ふたりともやっぱり、かわいらしい顔立ちをしていた。

ぱっちりした二重の目に、形のいい鼻、涼しげに整った唇。


生島(いくしま)健吾くん。

24歳の社会人。

どういうわけか、女子高生であるこの私と、こうしてたまに同じベッドで寝たりする関係にある。

< 1/ 213 >