夜遅く帰ってきた両親に何も言えなくて。

次の日の日曜日は、何もしないでただぼーっと過ごした。

月曜日になり、何も知らない両親は、いつも通り学校へ行くわたしを見送った。



教室の扉を開けると、希和はいない。

真っ直ぐ自分の席へ向かい、柏ユメの本を読み出す。

わたしには希和以外の親しい友達はいないから、基本希和がいないとひとりで過ごす。

まぁ希和が休んだことはないのだけど。



わたしが本を読み始めて間もなく、希和が教室に入ってきた。

希和はわたしと違って積極的で人見知りをしないから、わたし以外の友達も多い。

「おはよう」と挨拶を交わす希和を少し見てみると、希和もこっちを見ていて目が合った。

希和はいつもわたしの元へ来るけど、今日は来ないで自分の席に座った。

すぐに近くに固まっていた女子グループに話しかけられ、笑っていた。



ひとり窓際の席で本を読んでいると、「おはよう」と声をかけられる。

振り向くと、鞄を背負ったままの奥村が右手をひらひらしていた。




「……おはよう」

「筧はどうした。いつも一緒じゃねぇか?」

「…ちょっと」

「喧嘩でもしたのか?」

「…そんな感じ」



奥村は鞄を置き、席に座り教科書を入れ始める。



「……今、暇」

「へ?」

「今、暇かって聞いているんだ」

「……暇そうに見える?」

「…じゃ、後でで良い」

「良いよ、暇。どうしたの?」

「…良いのか、本」

「良いの。
これ読むの3度目だし、内容が全く頭に入らないから」

「…じゃ、ちょっと来て」



立ち上がって教室を出て行く奥村。

わたしは本を閉じ、後姿を追いかけた。