『…で、何しにこんな時間に?』

私はテーブルを挟んだ向かい側に座るラファールへ静かに問い掛けた。


風呂から上がると、リビングには何故か村長とラファールが並んで座っており、トキユメがニヤニヤしながら私達を待っていた。


『だから、コイツら庭で逢い引きしてたんだって』

トキユメがさも可笑しそうに私へと耳打ちしてくる。
だが普通に声はデカイ。

『違う!何で僕がこんなハゲとそんなこと…!
僕にはそんな趣味はない!!』

必死で否定するラファールと、その言葉に何度も頷いている村長は、もはやハゲと言われていることを微塵も気にしていない様子だ。

『じゃあ、何で居たの?』

再び質問しても、ラファールは黙って俯くばかりだ。
もしかして、昼間のことで何か企んでいたのだろうか?

『村長さんは何か知ってるのでは?』

ふと、窓際に立っていたミゼリアが声を発した。
確かにそうだ。ラファールと一緒に居た村長が無関係とも思えない。

『いや、その…ワシはただ…物音がしたから様子を見に行ったというだけで…』

『では、それまでは何処に?
聞けばトキユメが呼んでも姿どころか返事すらなかったらしいですね?
こんな夜更けに、何処で何をしてましたか?』

ミゼリアはテーブルに手を置き、村長へと顔を近づけた。
どこの名探偵だコイツは。

『ちょっとミゼリア、村長さんは私たちを無料で一泊させてくれる良い人なんだから疑わないの!』

私が一喝すると、ミゼリアは舌をペロッと出して引っ込んだ。

『ぼ…僕は…!』

突然ラファールが何かを決心したかのように立ち上がった。

『僕は!!アーリッヒ…!貴様らに明日の決闘を辞退させに来たんだ!!』

は…?
ラファールの言葉に私たちは固まった。

『そう!それだそれ!まさにそれ!!』

村長がやけに安堵した表情で声を上げる。

『ちょっと黙れハゲ。
おいラファール、そりゃ一体どーゆう意味だ?』

トキユメが村長の頭を鷲掴みにしながら、その横に立っているラファールを睨んだ。

『こ、言葉通りの意味だ!
いくら君たちが大学で優秀だったとしても、こっちにはあのドラケンがいるんだぞ!?
どうやって勝つつもりなんだ!?』


あ、完全に忘れていた…。

そうだった私たち…
明日決闘するんだったぁあーーー!!


いや待て落ち着け、幸いまだ決闘内容を決めてない…!
よし!ここは正々堂々オセロで決着ということに……

『どうやって勝つかだぁ…?
そんなの剣でぶん殴って勝つに決まってんだろ!!』

はい終了!!
トキユメあんた何勝手に決めてんのぉーーー!?

『剣で!?正気か!?
いくら、貴様が剣聖スズハゼの娘だとしても、ドラケンはそのスズハゼと肩を並べていたドラゴンキラーだぞ!!無謀にも程がある!!』

ラファールの仰る通り!!
うん、これは辞退しよう辞退!!

『ドラゴンキラーだぁ?んなの関係ねぇよ』

鋭い目つきで殺気を放つトキユメが力むから、頭を掴まれている村長がジタバタと激痛にもがいている。

『ドラゴンキラーだろうがドラゴンナイトだろうがセカイ○オワリだろうが、私がぶっ倒してやんよ!!』


いや、最後のやつ違う!
違う方のドラゴンナイト出てきてるから!!