優也は会長からの命令とは言え、茜に両親の離婚が決定的なものにあるとは言えなかった。そして、その離婚で美佐が他の男のものになるのを黙って見ている優也でもなかった。

 しかし、今は、茜に悟られる訳にはいかず、そこから会長へ話が漏れるのを恐れた優也は、かなり苦しい立場に立たされながら今後の事を考えていた。


「わぁ、今年はホワイトクリスマスになるのかな?! ねえ 優也さん、見て!外、キレイだよ。」


 夕食を終えた茜が窓の外にチラつく雪に気付いた。部屋の灯りを受けてキラキラ光るようでまるで星が落ちて来たかのような光景に茜も優也も見入っていた。


「キレイだな」

「今年のクリスマス楽しみね」

「何かしたい事でも?」

「うーん・・・・どうしようか?ケーキ買って一緒に食べよう?」


 屈託なく笑う茜に癒される優也だったが茜の言葉に返事が出来なかった。毎年優也の心の中で思うことは、クリスマスの夜は想う人と一緒に過ごしたいと言う気持ちでいっぱいになる。

 茜は確かに可愛いし一緒にいて楽しい存在ではあるが、クリスマスにベッドを共にしたい相手ではなかった。会長から吉報はまだかと催促されるも、「子どもは天からの授かりものですから」と何とか言い逃れて来た。しかし、それが何時まで通用するのかそろそろ会長も痺れを切らす頃だろうと思えた。

 そんな優也の気持ちなど知らない茜は、今年のクリスマスは優しい夫の優也が一緒なのだから、きっと素敵な夜になるのだとそんな淡い期待を胸に抱いていた。