「お母さんは、もう大丈夫だよ。俺達と一緒だったのが逆に気を遣わせて疲れさせたんだよ。」


 茜は優也の説得にも納得できなかった。

 日頃の疲れをとる温泉へ行くことで余計に疲れさせるなんて、そんなことは有り得ないと思えた。


「お母さん孝行をしたいなら他の方法でやったらどうだい?」


 
 自宅のリビングの窓から外を眺めていた優也がソファーに寝そべる茜を見た。茜は優也の視線を感じるとうつ伏せになりクッションを抱きしめた。

 そのクッションを取り上げた優也は茜の頭の上にポンッと乗せてクスクス笑うと、そのクッションを取り上げた茜はソファーに座ると勢いよく優也に投げつけた。



「何したらいいか分かんないわよ!」


 気に入らないと枕を投げるのは母親そっくりだと思うと優也は笑いが出て止まらなかった。

 茜は笑うところじゃないのにと、優也が何故笑うのか分からなかった。すると、かなり顔を剥れさせてまたソファーにうつ伏せになった。



「茜の手料理はどうだろう?ここへお母さんを呼んでも良いし、実家へ届けても良いじゃないか。」

「でも、一人じゃまだ作れない。」

「手伝うよ。きっと、お母さんは、温泉旅行より喜ぶかもしれないよ?」

「そかな?」

「きっとそうだよ」



 温泉旅行を台無しにした埋め合わせをしたい気持ちでいっぱいの茜の助けになりそうな提案だった。