夕方、学校の校門前に時間ピッタリに迎えにやって来た優也は優しい笑顔で茜を迎える。



「お帰り」

「ただいま」



 自宅ではなく車の中で「ただいま」と言うのは不思議な感覚の茜だが、優也の優しい笑顔を見れて内心はホッとしていた。


 帰りの迎えは要らないと文句付けた時に優也が厳しい表情をして怒った。それが頭から離れなかった茜は少し気になっていた。まだ、優也の機嫌が悪ければどうしようかと。


 けれど、優也の顔からはそんな怒りは感じられなく優しい笑顔を向けてくれていた。



「今夜は私がご飯作るね。優也さんはどんなの食べたい?」

「いいよ、茜は宿題あるだろう? まずはそれを片付けること。家事仕事は心配しなくていいんだからね。」

「でも、」



 茜は優也の妻となった以上は少しくらいは妻らしく家事仕事を手伝おうと思っただけで、学校の勉強を疎かにしようとは思っていなかった。


 自分なりにどうやって両立すればいいのか暇々考えていたのだ。けれど、そんな茜の気持ちは優也には伝わっていない様で茜は眉尻が下がってしまった。



「じゃあ、一緒に何か作ろうか?」


 運転する優也は前方を向いたままだが、横顔を眺めていた茜は優也がにこやかな笑顔でそう言ってくれたのが嬉しかった。嬉しくなって思わず両手で顔を覆ってしまった。