「せ、せせ、先輩ーーーー!!!」


「ど、どうしたの? 瀬野さん」



とある日の昼下がり。


昼食を一緒に食べるようになった泉美と俊は、屋上で並んで昼ごはんを食べていた。


そんな最中、泉美が興奮した様子で俊を見つめた。


「今の、もう一度お願いします!」


「え、何が?」


何のことかと首を傾げる俊に、泉美はうっとりとした表情で目をキラキラさせる。


「今の、中指で眼鏡をクイってするやつです!」


泉美が言っていることをようやく理解したのか、俊は少し苦笑い気味にうなづく。


「え……うん、いいけど……」


そうして再び俊がやった仕草に、泉美は感極まったように満面の笑みを見せた。


「……瀬野さん、本当に眼鏡が好きなんだね」

「はい! 大好きです!」


眼鏡が好き……。
わかっている。
そのために、わざわざ眼鏡をかけて君の視界に入ろうとしたのだから。


俊が甘やかに目を細めて笑うと、泉美はきょとんと首をかしげた。


「どうかしましたか? 先輩」


「………いや? それより…」


俊の細い指先が泉美の頬をかすめ、紅く染め上げる。


じわりと色づく様子に、胸がどうしようもなく締め付けられるのを感じながら、俊は泉美の耳元に唇を寄せた。


囁くように、甘く。


「大好き、なんて……妬けちゃうな」

「へ? 妬け……め、眼鏡のことですよ!?」


あたふたと目を白黒させる泉美に、俊は少し意地悪に笑う。


「知ってるよ。……でも、だめだよ。俺意外に好きなんて………言わせない」


「んなっ…/////」