ケータイ小説 野いちご

好きって言ったらどうする?

好きって言ったらどうする?

 午後八時。オフィスの総務課フロアにはもう誰もいない。一緒に入力を担当している先輩社員が忌引きで休んでしまい、私一人でずっとパソコンのキーボードを打っていた。でも、そろそろ限界。コーヒーでも飲んで一休みしよう。

 総務課を出てエレベーターの前を通り、自動販売機コーナーに向かった。お金を入れてブラックコーヒーを買い、壁を背にしたソファに座る。

 はぁ……。

 ため息をついて壁にもたれたとき、廊下を歩いてくる足音がした。

「あれ、梅(うめ)ちゃん」

 ひょいと自動販売機コーナーを覗いてそう言ったのは、一年前の四月一日に一緒に入社した同期の竹本(たけもと)純平(じゅんぺい)だ。同期にはほかに松井(まつい)孝弘(たかひろ)って男子もいて、私、梅谷(うめたに)莉乃(りの)と併せて“松竹梅トリオ”なんて呼ばれてる。そのせいでなんとなく仲良くなっちゃって、入社直後は三人で一緒に飲みに行ったりカラオケに行ったりした。寡黙な松(しょう)ちゃんとは違って、竹ちゃんはおしゃべりで明るい。仕事でミスして落ち込んでも、竹ちゃんに愚痴って笑い飛ばしてもらえたら、不思議とすっきりするんだ。

 でも、竹ちゃんは営業一課、松ちゃんはシステム課で、それぞれ仕事が忙しくなり、最近は三人どころかどちらか一人と会うこともあまりなくなった。だから、こうして竹ちゃんと二人きりになるのはすごく久しぶりで、嬉しくなる。

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