―――今から数時間前の二月十三日。




『ごちそう様でした。お父様それではお先に失礼いたします!』


夕食も早々に切り上げたアオイは椅子から立ち上がり一礼する。


『…もういいのかい?』


手を止めてアオイの皿を覗き込んだキュリオ。
もとより小食の彼女だが、今日はさらに口にした量が少ない気がする。


『はい!もう十分です。今日はそろそろベッドに入ろうかと』


『待ちなさい』


今にも背を向けて立ち去ろうとするアオイにキュリオの声がかかる。


『…は、はい』


ドキリと背を震わせたアオイはそっとキュリオの顔を覗き見た。


(出来れば秘密にしておきたいな…)


王であるキュリオが絶大な人気を集めるのはもちろんだが、個人的な贈り物は決して受け取らないため、民より寄贈されたそれらは孤児院などへおくられるのが常である。

その話を女官や侍女に聞いていたアオイはお茶の時間に出してもらおうと前々から計画を練っていたのだった。