そして人の時間でいう午前六時にもなろうという頃―――…


「あとはココアパウダーを振りかけてっと…」


(…急がないとお父様が起きてしまう…)


振りかけたパウダーを乱してしまわぬようチョコレートを丁寧に箱へと詰めていくアオイ。


「美味しそうに見えないのはやっぱりセンスの問題なのかな…」


ジルたち一流の料理人はどんな前菜もデザートも光輝く宝石のように盛り付けてくる。おしゃれなソースも飾りの花も嫌味がなく皿選びまで抜かりがないから尚の事だ。


「お店で買ってきた物だって言ってもお父様は信じてくれるかしら…」


いくら上手く仕上がったとはいえ、ところどころ歪(いびつ)なこのチョコレートが売り物だと言えばキュリオは疑問に思うかもしれない。

それどころか…


「こんなものを売りに出すとは…店の者をすぐに呼びなさい。その者が二度と商いが出来ぬよう取締りを強化しろ!」


「なんて言われたら立ち直れない…かも」


キュリオの口調を真似ながらブツブツと独り言を口にして勝手に落ち込むアオイ。


「……」

(やっぱり食べるならおいしいものがいいもんね)


そう思えば思うほど自分の作ったものたちがどうしようもなくちっぽけに思えてくる。


「お父様の反応をみてから来年のこと考えよう…」