わたしは見慣れた人影を交差点に見つけ、隣に並ぶ仁美に声をかけた。

「また明日ね」

 仁美はわたしを見て微笑むと、目の前の信号を足早に渡った。

 わたしは先ほど見つけた人影のところに歩み寄ると、声をかけた。

「ほのかさん」

 無表情だった彼の表情がぱあっと明るくなり、目を細めていた。

 彼はすぐ顔に気持ちをだしてくれるので、こちらも嬉しくなってくる。

 もう冬は足早に駆け抜け、春の気配がちらほらと覗くようになっていた。わたしと岡本さんが付き合い始めて、二か月近くが経過していた。

 仁美にはわたしは岡本さんが雄太の弟ということを伏せ、付き合っていることは伝えておいた。

 仁美は新しい恋人ができたことを心から喜んでくれているようだ。

仁美自身の恋愛は少しずつ進展を見せているようだった。今まで彼から誘われ、時間のあるときにしか二人で出かけたりはしなかったようだが、今は仁美が彼を誘うことも少なくないようだ。

「遅くなってごめんね」

「いいよ。俺が遅れることもあるから気にしないで」

 彼はそう優しく微笑んだ。