「おい、シャーロット。
教えてやれよ。仮にもこいつのヴァイオリンになるんだ。
莉々葵にヴァイオリンを預けるのが一番嬉しいに決まってるだろ。
あんなに大事にしてたんだ。
おまえが一番近くにいた。
だから知ってーーーー」
バンっーーーー。
女性がテーブルを叩いた衝撃で、フォークも床に落ちる。
「もういいでしょ!?
この話は終わりよ、莉々葵!
どこまでわたしを追い詰めるつもりなの!?貴女は!!
もう、二度とーーーわたしにあの子のことを思い出させないで!
わからないの!?わたしは忘れたいの!
貴女にはわからないわ!たった6年いただけの貴女には!
23年間一緒にいたわたしの気持ちなんて!わかるはずがないわ!
あのことの思い出すべて忘れてしまいたいのーーー」
わたしはこの時どんな感情が芽生えたんだろう。
不思議でならない。
ただ、咄嗟に言ってしまったのだ。
「忘れられるの?
忘れられる程の思い出だったのーーー?
だから、忘れようとするの?」
この言葉いま思えば鬼だったと思う。
たしかに、わたしは6年しかお父さんを知らないから。
それでも、忘れられない思い出がたくさんある。
23年間ーーー。
お姉さんはそんな重くて分厚い思い出を忘れようとしている。
忘れられるわけがない。
わたしはお姉さんがお父さんが亡くなってからどれだけ傷ついて、泣き続けて、ボロボロになっていく姿をみてきたから。
だから、これだけはわかる。