十兵衛は、しばらく利巌の屋敷に居候することにした。

十兵衛が屋敷に居ついて四日目の昼下がり、町人たちが住まう町で、十五になる娘が三人の男に襲われる。

ちょうど、誰もいないときであった。

男たちは刀を所持していないが、こういうことには手馴れているらしい。

男の一人が女子の後ろから首を締めて気絶させ、手足を縄で素早くしばる。

そこへ、籠が通りかかる。

三人の男が、気絶させた娘を籠に放り込むと、籠をかつぐ二人は何事もなかったかのように足を進める。

三人の男たちもまた、なにくわぬ顔でその場を去ってゆく。

その際、女子が落とした風呂敷を拾うことを忘れない。

どうやら、娘が親の使いで古着屋に行き、その帰りを狙われたようだ。

人目につかない頃合いを見計らった、白昼堂々の人さらい。

これが、神隠しのカラクリであった。

(そういうことか…)

男たちの気づかぬ所で、伊助が一部始終を見ていた。