藤吉は、落ち着いて事のなりゆきを話しはじめる。


「あっしは…いえ、あっしたちは、食うや食わずの日々に追われる、百姓にも馬鹿にされる扱いを受けてきました」

「……」

「ある日、馬に乗った武家の人たちが、あっしらの前に現れました」


藤吉が十歳を過ぎたころのことである。

藤吉の話によると、彼らの前にやって来た武家たちは、藤吉たち五人を馬に乗せて、ある屋敷に連れて行く。

藤吉が屋敷で目にするものは、何もかもが初めて見るものばかりで、ただただ驚くしかなかった。

当時の藤吉は、畳すら知らなかった。

畳の上で寝たことなど、一度もない生活を送っていたのである。

おなじ年頃の五人は、ただっ広い部屋に通されて正座する。

広くて綺麗な部屋だが、彼らにとっては妙に落ち着かない。

五人がそわそわしているところへ、屋敷の主人があらわれる。