「もうそろそろ終わりかな」

 私の斜めうしろで、鶏肉店の店長さんが言って額の汗を拭った。サンタクロースの赤い衣装を着て、赤いフェルト帽を被って、白い髭に白い眉までつけている。クリスマスイブだからって、そんな格好でコンロの前にいるのは熱いでしょうに。

 私も同じくサンタクロースの衣装だけど、商店街の店頭に立っているので、そんなに暑くはない。むしろ膝丈のスカートの下が寒いくらいだ。

「揚げたてフライドチキン、いかがですか~」

 商店街を歩く人は、私の声に耳を貸すことなく急ぎ足で歩いて行く。

 もうすぐ夕食時。

 みんなもう買い物は済ませただろう。あとは家族や恋人の待つ家に帰って、クリスマスイブを楽しく過ごすだけ。

「東(あずま)さん、お疲れ様。あとこのふた箱が売れたらおしまいにしよう。今日一日、よく働いてくれたね」

 店長さんのねぎらいの言葉に、私はホッと肩の力を抜く。

「いいえ。なかなか次の仕事が見つからないんで、こうして一日のお仕事がもらえて助かりました」
「東さん……」