『あの、いつもここに来ていらっしゃいますよね』

 いつも注文を取りに来ていた女性だ。
 歳は俺とそう変わらないように見えた。

 にっこりと微笑んだ顔が、整った顔を幼くさせる。笑った顔が子どものような女性だった。

『まぁ、会社も近いので』

『ありがとうございます。ついでに、おすすめは照り焼き定食です』

『…じゃあ、それを1つ』

『はい。照り焼き定食お1つですね~。オーダー入りま~す!』

 よく通るきれいな声だった。

 女性に声をかける男も多い。
 それでも、その女性は一切なびかず、誰に対しても笑っていた。

 今となれば、それは究極の天然であったと分かることだった。

『お待たせしました。照り焼き定食です』

 またにっこりと笑う女性は、ごゆっくりとささやいて厨房に戻っていく。