翌日。

デートの約束をしたせいか、日曜日なのにいつもより早く目が覚めてしまった愛美は、再び眠れそうにもなくてベッドから起き上がり、顔を洗おうと洗面所へ向かった。

(デートって…どこ行くんだろう?)

“デートして下さい”とは言われたが、具体的な事は何も聞いていない。

緒川支部長が普段休みの日はどんな事をしているとか、どんな趣味があるとか、まだ何も知らない。

(大人だからな…。初めてのデートだから無難に映画とか…?遊園地とか子供っぽいところではなさそう…。何着て行こうかな…。)

無意識のうちに緒川支部長と会う事を楽しみにしている自分に気付いた愛美は、眉間にシワを寄せて少し首をかしげた。

(なんだこれ…。初めてのデートにウキウキするとか…私はそんな乙女じゃないだろ?)

冷たい水で顔を洗いながら、うまくいかなかった時の事を考えて、あまり深入りし過ぎないようにしないと、などと考える。

(いつの間にかこっちの方が本気になって、いいように転がされて…後で泣き見るのはもうイヤだ…。)



朝食を済ませ、ゆっくりコーヒーを飲んでいると、スマホのメール受信音が鳴った。

(支部長から…?)

愛美はメール受信画面を開く。


“おはよう。
今日は11時くらいに
迎えに行ってもいいかな?”


(11時か…。)

スマホの画面から視線を壁時計に移した。

時計の針は9時半を少し回ったところを指している。

(まだまだ時間あるし…ゆっくり準備できるな。)