優斗君のライブは楽しかった。
ライブ前に投票を行った人気曲もあったりで時間はあっという間に過ぎてしまった。
ライブ前と後に近くにいた人と少し話をできたのも嬉しくて。
だけど優斗君を見ているとどうしても小林君のことがチラついてしまって、結局小林君のことを考えずにライブ参加することはできなかった。
やっぱりどことなく笑顔が似てるんだよね……。
ライブ会場から外に出て歩きながら頭の中で二人の笑顔が重なる。
確かに名字と学年は同じだけど、外見は似てないし性格だって違うはずだから偶然ってすごいと思う。
足を動かしていると前のほうにスタッフさんの格好をした人が一人。
後ろ姿からすると男の人かな。
会場近くに置いてあるゴミ箱のゴミを回収しているみたいだ。
「お疲れ様です!」
私が後ろから声をかけるとスタッフさんがピクッと肩を動かして振り向いた……って、え……!?
「小林君!?」
「多田さん?」
スタッフさんが着ていたTシャツを着て首からは関係者をしめすプレートをかけているけど、その人はどう見ても小林君だった。
制服かジャージ姿しか見たことがないからTシャツにジーンズという格好が珍しく思えちゃう。
小林君は私を見下ろすと「よく分かったね」と呟くように言った。
「スタッフさんのアルバイト?」
昨日のことがあって気まずいけど、ばったり会って一言も話さないのもいけない気がして。
小林君のそばにあるゴミ箱を見ながら聞くと「スタッフの中に知り合いがいてよく頼まれるから」と返ってきた。
「そうなんだ……」
「うん」
今まで見たことなかったけどスタッフさんはたくさんいるから知らなかっただけかも。
昨日のことがなかったらこうやって話せて嬉しいのにな……。