梅雨入り前


実家の庭にある飛び石の上に小さな淡い光が見えた。


この時期になると姿を現わす光り放つ生き物は近くの川の上流で放流され育った蛍。


家から50メートルほど行った場所が蛍の群生地でたまに迷い込んでくる。


その迷い蛍にいつもなら遠くから眺めるだけの所を、近くまで寄り話かける。



「こんなところにいたら成就しないよ。君の盛りの時期は蝉と同じ位短いんだから」



それでも飛んで行かない蛍はただただその場で淡い光を放ち続ける。



「恋愛が怖い?告白する自信がない?」



まるで答えるかのように光を放つ事をやめた蛍に自分を重ねる。



「それでも光らないと運命の相手は気付いてくれないよ。大丈夫。言葉よりも強い想はきっと届くから」