―彼女が笑ってこっちを向く。
俺の銃を持つ手が震える。

何故こんな事になってしまったんだろうか。

それはきっと俺が―



新学期。俺が彼女に出会ったその日は、桜が舞い散る春だった。

「なぁ知ってるか〜…」
「えー、マジー?」


俺もそれとなく友達と話したりもしたが、何度もそんなことをしているうちに飽きてしまうのは当然で、
俺は適当に返事をして頭を机に突っ伏した。

いつも通り先生がやってきて、
一人の少女を紹介する。

「揺無氷菜です。よろしくお願いします」

クラスメイトは驚いた表情、また軽蔑的な顔で彼女を見た。

まぁそれは当然だろう。だって俺も思ったんだから。


―白髪。
彼女、揺無氷菜は綺麗な白髪だったのだから。

だが言うなれば彼女は「はくはつ」であり、「しらが」ではないのである。

年老いた老人の様にあのチリチリな白髪ではなく、
地毛のさらさら感が出ていた。

「髪の色は生まれつきで気味が悪いかもしれませんが、それ以外は人間ですので安心して下さい」

彼女はクラスメイトのざわめきから何か察したのか突然そんなことを言い出した。

先生に支持され、俺の隣の席に座る。

この時の俺は、少し気になっただけで、またいつも通り過ごすのだろうと思っていた。

まさかこんな事になるとは知らずに。


「…」

とは言え、彼女から感じるものはあった。

いや、白髪だとか、ただ単純に可愛いだとか、そういう事ではなく。

…と。そんな事を考えているうちに彼女を見つめ続けていたことに気がついた。

「…あの、何か?」

「いや、ごめん。何でもないよ。
よろしく。」

「いえ、大丈夫です。よろしく、お願いします」

随分礼儀正しい子だった。

今日が初めての学校ということもあるだろうが。

俺はきっとここで彼女に会った事を後悔するだろう。

人生の転機。…―であろうこの日から
俺 ―神城悠貴と、
揺無氷菜の物語が始まった。