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「じゃあ、また後でね」




しっかりと。私の目を見て、強く握ってくれた手。

玄関前で、振り返った裸女が、温かい手を離した。


外にはオレンジ色の夕日。
蝉が煩いくらいに鳴いていて、暑い夏を、余計暑くさせているような気さえする。



私もコクン、と頷き……
ゆっくり閉まる玄関から、バタンと音が室内に響くまで視線を外さなかった。





――――いよいよだ。


胸の前で拳を握って、軽く息を吐く。


緊張……しない訳がない。

部屋に戻り、付いたままのテレビを消すと、携帯を手にし、着信履歴から番号を探して、発信ボタンを押した。



「もしもし……お父さん?」



数コールで繋がった電話は、私に更なる緊張を走らせる。