結局ゼストのあの挙動不審な感じは何だったのかがわからないまま、翌日を迎えた。


あの30分後に帰ってきたソウヤさんにゼストの様子を聞いてみたけれど、当てになるような返事はもらえなかった。


昨日のあの感じは本当に何だったのだろう。


「キロ。ルナ見なかったか」


午前10時。自分の部屋で調査に行く準備をしていると、向こうの方でゼストの声が聞こえた。


ゼストにキロと呼ばれたのは、私たちとこの『家』で生活をしている19歳の男の子。明るめの茶髪で、髑髏の模様が入ったバンダナは彼のチャームポイント。性格は明るくて、いつも元気といったところ。そのため、ムードメーカーのような役割を果たすこともしばしば。


そして、昨日の朝私が布団をたたんでいたときにこの部屋を当たり前のように通路として使った三人のうちの一人でもある。


――いや~昨日のドラマ最高だったな。


26ページをご覧ください。この台詞が彼です。思い出しました?


「俺は見てないけど……」


「私ここだけど」


ちょうど準備が整ったため、部屋からひょこっと顔を出して答えてあげた。私ってば、なんて優しいのだろう。


「あ、空耳か? 声は聞こえたのに姿が見えねえ……」
「わざとらしすぎるわ!」


ゼストの私への態度は相変わらず。……まったく。一緒にいるだけで疲れる幼馴染を持ってしまったものだ。


ほら行くんでしょ、とゼストが提げているショルダーバッグを引っ張り、私たちは出発した。


いってらっしゃーい、というキロさんの声を聞きながら。