「またそうしてるのか」



頭上から鬼羅の声がして慌てて胸元を閉じる。



「み、見ないでよ!」

「今更」



シレッとそう言って通り過ぎていく鬼羅をじとっと睨みつけながら、再び胸元に視線を移した。
なくなってしまった痣。
あれから私は、何度もそれを確認するように胸元を見ている。

それを、鬼羅はそうして呆れたようにからかうんだ。




「不思議なんだもん。ずっとあったものが消えるって」

「別に、なにも言っていない。またみているのかと聞いただけだ」

「目で訴えてた。呆れた顔してた」




私がふてくされてそう言うと、鬼羅は面倒くさそうに目をそらす。
そういうところ、相変わらずなんだから。




「おい、千菜。出るぞ」

「え、出るってどこに」

「黙ってついて来い」



そう言って鬼羅は戸を開けた。