その翌日。

「今日は早かったかなあ」

スマートフォンで時間の確認をしながら、あたしはいつものように『ラグタイム』へと向かっていた。

まあ、何事も早い方がいいよな。

もし着替えている最中に武人か翼が入ってきてしまったら大変だ。

あたしは双子の弟――要は男――と言うことになっているからバレたら大騒ぎだ。

「おはようございまーす…」

裏口のドアを開けると、シーンと言う効果音が聞こえそうなくらいに静かだった。

あー、これは本当にあたしが1番か?

でも開店前の掃除をしている黒崎さんがいるから1番な訳ないか。

黒崎さんにあいさつをしようと思い、ホールへと向かっていたら、
「行方がわからなくなった!?」

藤本さんの大きな声に、あたしは驚いて飛びあがりそうになった。