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 朝日が上ったばかりの市場。



 早い時間にもかかわらず、人でごった返すその中を、颯爽と歩く二人の男。



 二人がどちらも、下町ではめったに見ないほどの端整なイケメンだったからだろう。



 道行く人々の視線が一斉に彼らに集まる。



 そんな視線など一切気にすることなく、彼らは必要な物資食料を揃えていった。



「食料は、このくらいでいいか」



「いいんじゃないのか。それよかそっちの荷物貸せ。俺が持つ」



「おう、ありがとう」



 そんな会話を交わしながら、彼らは歩く。



 市場では頬を桃色に染めた女性たちが顔を見合わせ、朝とは思えないテンションで騒ぎまくる。



 それからしばらくの間、二人のイケメンの存在が噂になったことは言うまでもない。



 

 ◇





「...ルミア、今日も部屋から出てこないのかな...」


「......たぶんな」


「もう二日だろ?せめて何か食べてもらわないと...ただでさえ、国を出てから元気がなかったんだ。これが続けば体に支障が出る」


「...ほんと、お前はルミアの事になったら饒舌になるね、リュカ」


「そう言うお前も、ずっと寝てねーくせによ」


「.........」

「.........」



 食材などの荷物を抱えたイーリスとリュカは、無言で見つめ合い、



「「......はあ」」



 そして、盛大な溜息をついた。



 
 



 ジンノがアイルドール王国を去ってから丸二日。



 その日から今日にいたるまで、ルミアは部屋に閉じこもったまま。



 外からどんなに声をかけようと返事も返さない。食事もとらない。



 おそらく内側から結界術系の魔法をかけているのだろう。様子をうかがう事すらできなければ、リュカやイーリスでさえ中に入る術がない。



 そのことに二人は頭を悩ませていたのだった。