3月下旬、いよいよ最後の学年になる三年生を目前に、春休みに入った。

そして、長いオフシーズンも終わり、あさってから春季大会が始まる。


背番号も渡され、大会を目前にした部活が始まる前の朝。

自転車置き場で誰かを待っているようだった小野くんに挨拶をすると、ちょっといい?と声をかけられた。


「今日部活が終わったあと、久しぶりにミーティングするから。それで......ちゃんとみんなに話しをするよ」


何の話をするのかよく分からなかったけど、口数少なく何かを決意したような小野くんに、ただ、そうなんだとうなずいた。

まるで頼りがいのあるキャプテンみたいな、って言ったら失礼だけど、今までとはどこか違う強い決意を秘めた小野くんの横顔を見て、私も最近ずっと考えていたことを口に出す覚悟を決めて、口を開く。


「今度の大会が終わって、夏がきたら引退だね。
あのね......、最後の大会が終わったら、一秒でもいいからマネージャーじゃない私のことも考えてみてほしいんだ。少しでも可能性があるかどうか、考えてほしいの」


何の反応もなしに、聞いてるのか聞いてないのか分からないまま、ハンドルに手をやり、こちらを見もしない小野くんに、私も伏し目がちに話を続けた。


「大事な大会前にこんなこと言い出してごめんね。
これで......最後にするから。それで全く可能性がなかったら、あきらめる。

今から引退まで、それまでは絶対に小野くんのこと部員としてしか見ないようにするし、小野くんもそうしてくれていいよ。だから、夏の大会が終わったら、最後にもう一度だけ、返事をください」


こんなことわざわざ宣言しなくても、もともと小野くんはマネージャーとしてしかみてないだろうけど、けじめをつける意味でそう口にする。

夏の大会まで、あとたったの四ヶ月。
もう部活も引退するし、終わったらすぐに受験。

最後のたった四ヶ月くらい、小野くんもこれ以上余計なこと考えたくないだろうし、私もそう。


何回も告白しても意味ないだろうけど、今度こそけじめをつけたい。
どんな結果になっても、これで最後にしよう、と。